一人暮らしのおばあちゃん

2011/11/24 Thu 20:21

101匹のワンちゃん、ダルメシアンに囲まれて、おなかいっぱいで帰ってきた日曜日

アパートのエレベーターに乗る前に、下のおばあちゃんに呼び止めらました。


このおばあちゃんは89歳(たぶん。でもちょっと前には86歳って言っていた気もする)。昔はporteraとしてドアの見張りをやっていた人。引退後もそのまま住んでいいと言われたのよ、ということで、地上階の奥に住んでいます。エレベーターの目の前が玄関です。

アパートの出入りをするみんなを捕まえて、おしゃべりするのを楽しみにしている、おばあちゃんですが、寂しがり屋でもあり、ここ数年はよく泣いていることもあります。私が今のアパートに住み始めて10年以上。最近は足が痛く、あまり歩けなくなって、家が出れません。アパートの住民とのおしゃべり以外は、楽しみがない、といった感じでしょうか。4人の娘さんがいますが、お世話係の女の子を数年前から雇っています。お世話係も2人目。


断れない私は、よくエレベーター前でつかまってしまうのですが、時間がある時はおしゃべりにつきあいます。急いでいる時は彼女に見つからないように注意し(笑)、どうにか振り切らなくてはいけません!


この10年で1度だけ、突然おうちに招かれたことがあり、部屋のぴかぴかの掃除ぶりに心底驚いたことがありますが、この日曜日。

適当に言葉を交わすだけのつもりだったのに、突然、家の前で泣かれてしまいました。

「寂しくてたまらない。お願いだから、うちに入って、しばらくお相手をしてちょうだい」手をぐぐぐっと握られてしまい・・・。これはさすがに初めての経験です。

急いでいるわけでもないし、私だって年を取ったらこんな思いをするかもしれません。おつきあいすることにしました。

(正直言うと、あまり手をぐいぐい引っ張られるので、「家に入ってしまうと、このまま家から出してもらえないんじゃないか、、」という気持ちがちょっと横切りました。というのはこのおばあちゃん、ぼけてきていて、2ヶ月ぐらい前に私が誰だかわからなかったことがあるのです。今は記憶は戻りましたが・・。それに、この日はいつになく、真剣な悲しみぶり、だったのです。)


この日おばあちゃんが語ったことは・・。
・娘4人いるが、みんな子供や孫の世話で忙しく、誰も来てくれない。
・老人ホームに入れといわれている。自分は絶対に老人ホームには入りたくない。
・自分の母も夫もこのアパートで亡くなった。ここで娘達4人を育て上げた。
・ここの住民は本当によくしてくれていて、この住民が大好き。
・夫の寡婦年金が良いおかげで、お世話係を雇える。
・お医者さんからは100歳まで生きると言われた。
・足が痛いなどの問題はあるが、ご飯はよく食べる。自分の健康は食事にある。
などなど。

テレビがうつらなくなった、と言っていて、ちょっといじってみましたが、本当にうつらない。
しかし試行錯誤の末に、ようやくテレビがうつるようになりました。
いじったのかとすごく怒られるから、娘やお世話係にも言えない、、と心配してましたが、テレビが直れば、寂しさが紛れますから、役に立ってよかったです。


ところでこのおばあちゃん。
娘さん4人が来ない話は前から知っています。それがよく彼女が泣いている原因の1つなのですが、本当にほとんど彼女に会いに来ないのです。

以前からそれが不思議で仕方ありませんでした。というのはスペインでは家族愛が強く、しょっちゅう自分の家族と会っていて、密接な関係を保っているのです。毎日会う、毎日電話の話も聞くし、毎日じゃなくてもせめて週末には一緒に大家族でご飯を食べたり。

娘さんたち、今は小さな孫の世話で忙しいらしく(彼女にとってはひ孫)、それも分かりますが、90歳に手が届く実の母親が一人暮らしで、あれだけ寂しがっているのなら、もうちょっと会ってあげてもいいだろうに。4人いたら、一人が月に一回担当するだけで毎週一度は娘の誰かと会ってることになります。忙しいっても、月に1度だったら可能でしょう!


ひどいおかあさんだったのか?というわけでもなさそうなのですよ。ちょっとおしゃべりがしつこいことはあるかもしれませんが、今回もお世話係の最初の女の子がお金を盗んでいたという衝撃の話を聞きました。(なぜ衝撃だったかというと、私は数年前に泥棒に入りかけられたことがあり、あの時、このお世話係の女の子を怪しいと思っていたからです。やっぱりそういう子だったのか!)

しかしその子のことも、ちらりと話したけれど、「誰のことも悪く言いたくない」とすぐに口をつぐみました。「彼女のことは私も許している。神様も許してあげますように」「人の悪口は言いたくないの」と。

私のことも、最初ソファーに座っている彼女に手を握られているので中腰体制で、足が痛く、もぞもぞしていたら、「帰りたいのでしょう?ごめんなさいね。もういいわよ」と気を使ってくれるのです。まだ家に入って5分ぐらいの頃だったのに。(何時間か拘束されちゃうかしら、と覚悟してました)

かわいらしくて、ほろっとします。

いえいえ、ちょっと椅子持ってきていいかしら?と、椅子を借りて、もうしばらく、おつきあいしてきました
家族中の写真を見せられ、宗教のコレクションを見せられ、かわいい寝室なども見せられ、でも「もう遅いから、ありがとう」と思ったより早く開放されました。


・・・

自分の親のこと、自分の老後のこと、世の中のすべての老人のことについて、深く深く考えてしまいました。


今考えると、私の祖母は幸せものでした。同じく4人娘がいるのですが、隣県に住む私の母以外の3人は、3人全員が(!!!)毎日(!!!)病院へお見舞いしていたのです。本当に毎日です!!しかも脳梗塞で皆のことがわからなくなっていたにもかかわらず!!!

お肌がかさかさするので、おしゃれだった祖母のためにクリームを塗ることにしたのですが、3人が3人とも毎日クリームを塗っていたことが後に判明!1日3回クリームですかっ?っとお騒がせの3人娘たちでしたが、なんと幸せで賑やかな老後だったでしょうか。

しかしこのおばあちゃん。4人も実の娘が同じバルセロナに住んでいて、ほとんど会いに来てくれない。
天涯孤独な人より、もっと寂しいことじゃないですか?


家族を大事にすると思っていたスペイン人ですが、年を取ると(娘さんだって年をとってますからね)自分本位になって、人のことを構わなくなってしまうのでしょうか。どこの国にもいますが、年寄りを敬わず、自分の都合が大事と、日本人よりもあっけらかんとして、悪びれないスペイン人もいるのかもしれません。

スペイン人って、喜怒哀楽もはっきりしているし、しがらみ・世間体・人の目・こうあるべきだという固定観点、などに日本人ほど縛られません。ですので良い人と、そうじゃない人の差が、日本人より激しくて時々びっくりします。



逆に、住民の人によくしてもらっている、という話も本当。いつも住民をおしゃべり相手に捕まえている彼女ですが、これは不幸中の幸いというか、彼女にとって幸せなことの1つです。そうでなかったら、もっと寂しがっていたでしょう。


いまだに、ご近所さんでお年寄りを助け合う風潮が、都会のバルセロナでも、まだ残っています。
もちろんアパートによりけりですが、バルセロナで4軒目のこのアパート。ここの助け合い精神はダントツで、スペインの良き面を見る気がします。年寄り+スペイン各地からの移民が多い、サンツ地区ならでは、でしょうか。地上階に入っている肉屋さんまで(住民ではない)、ここのアパートの年寄り連中の面倒をよく見ます。そんなご近所づきあいなので、私もスーパーの重い袋を持ってあげたりと、若者として結構協力しています。

スペインの良いなと思う点のひとつ。でもこのアパートもそうですが、どんどん若者に代わっていき、そうすると、この習慣はどんどん失われていっています。


・・・・・

時間があれば、できるだけこれからも、おばあちゃんのおしゃべりにつきあおうと決心した日でした。
(ワンちゃんとの遠足から、なんだか、充実した?1日だったなあ)










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